サンゴが危機にあるナンバーワンの原因、それはやはり地球温暖化による水温の上昇です。
海水温が上がると白化現象でサンゴは弱っていきますが、サンゴは人間と同じように、それぞれが生物の回復力をもっています。
バランスのとれたきれいな水質・光・水の循環のある環境では、高水温であっても抵抗力が強まり、気候変動の影響にも強いことがグレートバリアリーフや世界のサンゴ礁の研究結果からわかっています。また、様々な研究からサンゴは長い間をかけ、その地域に適応する、極めて適応力の高い生き物だということもわかっています(*1)。
過去20年間に於けるグレートバリアリーフの研究では、成長が早く温度変化に敏感な種が多い外洋のサンゴでは水質改善で白化を緩和することはできないが、浅瀬そして中層にあるサンゴは環境的、人間的な要因が強く影響し、水質を6〜17%改善すれば、白化現象からの回復率が上がることがわかりました(*2)。
反対に、水質の悪いところでは回復が遅くなり、病気にかかりやすくオニヒトデの発生も起こりやすくなります。(3*) オニヒトデはいくら駆除しても、水が汚れていたり、漁業で生態系のバランスが崩れるなどの好条件が重なるとまた増えてきますから、駆除にお金をかけるより、本当は水質改善をしたほうがいいのです。
データ:沖縄県衛生環境研究所 サンゴ大規模白化緊急対策会議(2017年4月)資料より
沖縄のサンゴは貧栄養の海に適応して何万年もの間をかけて進化した生物です。そんなサンゴにとって、海の富栄養化がすすむ(つまり陸からの汚染がひどくなる)ほど生きにくくなることが上のグラフからわかります。
沖縄県衛生環境研究所は、沖縄のサンゴに適した水質は、全窒素値が0.08mg/l以下であるという調査結果を出しました。全窒素というのは富栄養化の指標として使われ、水が汚れると多くなるものです。この数値以上全窒素の濃度が高くなると、沖縄の沿岸サンゴはほぼ適応できず、上の写真のガレ場のようになってしまうことがわかっています(*2)
悲しいのは、これが今ある環境基準(0.2や0.3mg/L)より、ず〜っと低い値ということ。この0.08mgを守るための基準は国立公園海域であっても現在ありません。モニタリングをしているだけなので、汚染源を減らさなくてはどうにもならない状態です。そしてその汚染は殆どが陸から海に流れ出ています。
データ元:沖縄環境衛生研究所 サンゴ大規模白化緊急対策会議(2017年4月)資料より
2018年に行われた石西礁湖の水質モニタリング調査*では、石垣市の多くの地点では0.04mg/l~の0.08mg/lの範囲にあったのですが、大浦川の河口・白保海域・宮良川の河口では0.11〜0.22mg/Lと、この基準値より高い結果が出ていました。つまり、これは、サンゴをガレキの山にしてしまう値。。😭そして、環境省の一斉調査の結果でも、この辺りのサンゴの生き残り率(被度)はとても低くなっています。
健康なサンゴが本来の回復力を発揮して繁栄できるようにするためには水質が改善される必要があることが明らかです。通常でもこの数値ですので、大雨が降った後はもっと値が高くなるでしょう。もうすでに、サンゴはいっぱいいっぱいのところを頑張って生き延びているのです。
特に、私が過去7年くらい石垣の様々な場所でシュノーケルをしていて感じることは、米原や山原などの手付かずの豊かな山がすぐそばにせまり人口も少なく地下から海に山からの湧き水が湧いているようなところでは、サンゴの多様性が素晴らしく、石西礁湖の殆どのサンゴが死んでいるような時でも元気で、再生が早いことです。
山からの水に含まれる微量元素が自然本来の機能を高めて、特別な生態系を作っているように感じます。手付かずの山の自然がサンゴを危機から守っているのかもしれません。
今、石西礁湖のさんごが減少している理由、それはまさに世界的な気候変動の影響だけじゃなく、ローカルの水質汚染や沿岸開発による自然の機能低下というダブルパンチによるものなのです。
でも、そこで希望があるのは、世界的な気温は私たちがすぐ治すことはできませんが、島の周りの水質なら島をあげて取り組めば改善できるということです。サンゴが守られれば魚も増え、安心して漁業をしたり観光客も呼ぶことができるでしょう。
私たちの選択が未来を左右するのです。
(Volume 3. 赤土や農薬だけじゃなかった!ハワイからの教え、につづく....)
参考:
Gyoppy! 生物は弱いものしか進化しない」危機の時代に、人間がサンゴから学べること【後編】, Miratsuku, 2021, 04.12.
沖縄県衛生環境研究所 サンゴ大規模白化緊急対策会議(2017年4月)資料
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