雨が降り、山から陸を伝って海に流れ込む水の汚染源は、管理のやりすさにより大きく2つに分けて考えられています。
1つめは地表を流れてそこにある畑や畜産小屋、工場などをとおり川に入ったりしながら、最終的には海へ注ぐもの、そして、2つ目が家庭や工場からピンポイントで排出されるものです。
1の汚染源は地表面全体が汚染のもとになり得るためピンポイントで特定することが難しく、”面源汚染 (ノンポイント・ソース)”と呼ばれています。農業や畜産、工業などから地表で使用する様々な物質が水に溶け込み、赤土やゴミといっしょに海に流れ込みます。
一方、2の家庭や工場からの排水は、排水元が地図上の”点”で特定できるので、下水処理を通して汚染を少なくしてから流すことができます。このため点源汚染(ポイント・ソース)と呼ばれています。
この点源汚染である家庭排水や工場排水は、基準を設けて規制さえ徹底すれば、管理しやすいほうの汚染源です。しかし、石垣島の下水道接続率はまだ60%。改善してきているとはいえ、沖縄県の他の地域と比べても低いレベルです。ちなみに最低の地域は沖縄県中城村の53%。沖縄県平均では87.4%となっています(*1、*2)。
沖縄県は生活排水等の処理対策として「沖縄汚水再生ちゅら水プラン」を策定しています。今後、普及率を平成37年度(2025年)に約95.4%、平成47年度(2035年)に 約100%とすることを目標としています(*2)。
しかし、世界の専門家が集まる気候変動の政府間パネル(IPCC)が出した予測では、9年後の2030年までに世界のCO2排出量を半減し、地球全体の温度上昇を産業革命前より1.5°に抑えることが地球の限界のガードレールと言われました。
2030年までは70〜90%のサンゴが死滅、それを超えるとサンゴは事実上絶滅すると予測されています😭 世界的な危機がまったなしの中、せめてローカルの規制もスピードアップできないでしょうか。
(データ:沖縄汚水再生ちゅら水プラン、平成30年度)
石垣はサンゴ礁の島、サンゴへの影響を考えた水質管理をすれば、より一層厳しい基準があってもおかしくないのですが、接続率が平均6割で止まっています。
つまり、サンゴにとって既にいっぱいいっぱいのところへ、私たちは生活から出るさまざまな汚染を流し込んでいるのです。
ちなみに昔、水質汚染や赤潮で悪名の高かった瀬戸内海は、富栄養化を改善するため瀬戸内海環境保全特別措置法を定め、全域で陸からの排出規制を行った結果、今ではきれいすぎると言われるほどになっています。(ですが、富栄養化は改善しても既に埋め立てで干潟や藻場が減り魚も減ったため、自然の有機物循環機能が落ちて漁業生産力が改善しないまま、という問題も残っています。)瀬戸内海ほどの規模でもやればできることなんですね。
石垣市では接続率を増やすため補助金もだして広報にも力を入れています。
ちなみに、石垣市の下水道にマスコットキャラクター『スイスイ』がいるのを知っていますか??
石垣市下水道課(*3)より
スイスイ!!
実は、下水はほとんど人に話されていない巨大な環境問題です。ハワイ大学マノア校の研究者たちは、このなかなか向き合いづらい問題に勇気を出して向き合い、サンゴへの大きな脅威として下水の影響を研究してきました。
研究結果から、下水には富栄養化をおこす窒素やリンの他に、人間が使用した抗生物質や薬剤などあらゆる種類のサンゴを弱めるものが溶け込んでおり、病気を引き起こし産卵や受精の機能をも弱めていることがわかりました (*4)。この中には、ノロウィルスなどの人間や動物からもたらされるウィルスも含まれます。人間からノロをもらってしまうなんて、サンゴが可哀想ですね。
ハワイ大学マノア校 Dr. Kristen Maizeのサンゴ保全のための下水対策ウェビナーシリーズ(*4)
さんごが減っている一因は私たちの汚物だったなんて、なかなかつらい事実です。でも原因がわかれば対処もできるというもの。なるべく、わかっているリスクは無くしたいですね。
下水道を接続していなくて、サンゴや海への影響については考えたことがなかった、という方、石垣市はさまざまな補助金や支援策を用意しています。ぜひここで、考え直してみませんか?
サステナブルアイランド石垣 でも今後、石垣市からも情報を収集しながら、石垣島で下水道の接続率を増やすためにどんなことができるかを、調べていきたいと思います。
また、個人的には大型観光クルーズ船からの廃水影響も気になるところです。
現在、上記のウェビナーを提供する「コーラルレジリエンス(*4)」などの、世界の環境研究をまとめた情報が、多くの市民科学へのヒントを提供しています。科学的な理解をすすめていき、何をしたらよいのか効果的で実現可能な解決策を探っていきます。
ローカルの情報などお持ちの方、ぜひご連絡ください🐬
またこの問題へ向き合ってくださる素晴らしい方々の応援も、お待ちしています。
情報の提供、訂正(ちょっと、これはちがうのでは?)も大歓迎です。
ここから建設的な議論ができていけば良いなと思います。
(Volume 4. 赤土はなぜ無くせないの?へつづく... )
参考:
コーラルレジリエンス オンラインコース「Ocean Sewage Series キックオフウェビナー」
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