Volume 6. キーワードは「レジリエンス(回復力)」 日常生活を送りながらサンゴと水質を守るガイドライン



人間はこれまで、環境の危機が報告されるたび、技術でなんとかできると希望をもってきました。生活スタイルを変えなくても、新しい技術が開発されれば問題もなくなる、と。しかし、人間の技術では自然の機能を復元することはできません。沿岸地帯を汚染や開発から守ること、そしてこれまですでに傷んでしまった豊かな沿岸地域を回復させること、無理な開発をしとめどない経済成長をしなくても、与えられた資源の中で Thrive(繁栄)することが、今後の地球上で活きるためのキーワードとなっています。

サンゴはそれがどれくらい成功しているか、まるでバロメーターの様に私たちに教えてくれているのです。


危機感をあおり、無力感を与えたいのではありません。みんなが事実を知り、団結して解決することが必要だからこそ、伝えているのです。私たちにできることはたくさんあります。


長年、石西礁湖サンゴ礁保全協議会の委員であり、フィリピンやインドネシアで地域と協働のサンゴ礁保全プロジェクトを実施してきた、東京工業大学教授の灘岡先生は言っています:


 「生態系保全の観点からポイントとなるのは、いわゆる生態系の持つ回復力(レジリエンス)です。つまり、白化をもたらす夏場の高海水温は今後も数年に1回程度の頻度で発生し、しかもその間隔が今後次第に短くなっていくことが想定されます。そうすると、白化が発生した後のサンゴ群集の回復をいかに早めるか、すなわちレジリエンスを高めるかということがとても重要な視点になります。


レジリエンスを高めるには、周辺陸域からの赤土や過剰な汚染など、常態化しているローカルな環境負荷をできるだけ抑えサンゴ礁生態系の健全性を高めておく必要があります。」

いま、プラネタリー・バウンダリー(惑星限界)を超えている「生物多様性ロス」のほか、もう一つの脅威、「窒素やリンによる環境汚染」の原因も、食料を作るために使われる化学肥料(主成分が窒素・リン・カリウム)だといわれています。世界で使われる化学肥料は年間1億4500万トンでそれが川や海に流出し、汚染物質となっています。

2017年の分析 (Campbell et al.) によると、窒素・リンの汚染が惑星限界に至る8〜9割は農業が寄与しているといわれ、この循環を持続可能な範囲に収めるには、肥料投入量の最適化、耕起や灌漑といった管理方法の改善など、農業分野での対策が必要です。

また、窒素とリンは、運輸や産業、それから私たちの廃棄物、下水からも出ています。つまり私たちの文明そのものが様々な形で汚染物質を排出しているのです。これは環境中に流出されることでN2O(温室効果ガスの一種)を引き起こし、温暖化・富栄養化・生物多様性ロス・土壌汚染とさまざまな害に結びつきます。

だから、これを様々な産業にいる人、そして、それを使う消費者が知る必要があります。これを変えていくには子供への環境教育だけでは間に合わず、今、産業と社会を形作っている大人がこれまでの方法を変え、それを子供に見せることが必要です。でなければ、今の子供が何かしようとしたときに、もう守る環境が残されていないかもしれません!

そのために私たちができることとして、SIIからの提案です:

買い物・消費

  • 環境に配慮した減農薬・減肥料の農業から買おう

  • 生産漁場がわかるサステナブルなシーフードを選ぼう

  • 過剰に水を汚染しない小規模な畜産から買おう

  • なるべくローカルの生産者から買おう

  • 輸入物はなるべく環境に配慮した認証された商品を買おう

  • インパクトの少ない持続的な観光を心がけよう

生活・仕事

  • 下水対策を行い、水・環境を汚さない

  • 生態系を壊さず、守る行動をとる

  • 環境や人権を守る企業を選び応援する

行動

  • 環境や人権を守るよう行政に意思表示をし、メッセージを送る

  • 環境に配慮した持続可能な生産物が欲しいという意思表示をし、生産者へメッセージを送る

個人個人の力は微力ですが、全体の5%が変われば社会に影響を与え、社会システムそのものが変わるといいます。消費者の希望によって企業は提供する商品を変えるのだから。行政も市民の希望を実現しようと機能します。この意味で、現実は私たちが作り出しています。みんなの力でシステムチェンジを起こして行きましょう。

参考文献:

地球の限界”プラネタリーバウンダリー”&循環型社会〜世界と日本の取り組みからみんなでできることを考える〜

http://cger.nies.go.jp/cgernews/202012/360002.html

東京工業大学 灘岡研究室:

https://www.titech.ac.jp/public-relations/research/stories/faces22-nadaoka