『お金をかけない農業』で作物を育てる 自然菜園 土楽の下地宏之さん

更新日:7月1日



石垣島の宮良牧中地区の高台で、自然菜園 土楽(どうらく)という名前で野菜やフルーツを育てている下地宏之さん。とても見晴らしのいいこの畑で、島らっきょうや大豆、水菜、小松菜、パイナップル、紅芋、里芋、サトウキビなど、季節に合わせてさまざまな作物を自然栽培している。


ここで畑を始めたのは2012年。このあたりは海へ向かって斜面となっているため赤土が流れやすく、まとまった雨の後には宮良湾が茶色に染まってしまうほどなのだそう。元はキビ畑であったこの土地も表土が流れてしまっていて、土を入れ直すところからスタートしたのだという。現在は農薬や化学肥料、除草剤は使用せず、土づくりには畑の雑草や作物の茎や葉、そして米ぬかなどを使用し、土の中の多様性を探っている。



下地さんの後ろに伸びる細長い葉のベチベル(ベチバー)という植物は、赤土流出を防ぐためのグリーンベルト。月桃よりも根が広く張ることから、近年島で重宝されている。成長の早い葉は、土の水分を保つ敷き草として使用している。



ピーチパインの畝のあいだでは下大豆(ゲダイズ)を育てている。下大豆とは、18世紀から八重山で育てられてきたという大豆。これで作る味噌が美味しいのだそう。パインは無肥料は難しいといわれているけれど、自然開花させると味が違うと感じるので自然栽培に挑戦しているところ。マメ科の植物は、野菜の生育に欠かせない窒素を空気中からバランスよく取り込んでくれるので、他の作物と交互に植え付けることで効果を期待している。


収穫した下大豆


風の影響を受けやすいショウガは、サトウキビの根元に飢えている。サトウキビはチップにしたり、搾りかすを土にすき込んで発酵させているのだそう。



島らっきょうの栽培は10年目。土から掘ったばかりの島らっきょうを食べさせてもらうと、みずみずしくておいしく、えぐみはまったく感じなかった。


本土の大学で環境デザインを学び、関東で建築の仕事に数年勤めて島に戻ってきた下地さん。キビ農家であった祖父母から続く畑もあり、お父さんと一緒に農業を始めた。1年後に独立して現在の土地を手に入れ、土楽をスタート。土楽の名前には、人が集まってきて土にふれ、楽しみながらものづくりができるような場にしたいという思いが込められている。自分ひとりでせっせと野菜を育てる畑ではなく、さまざまなものが生まれる場所にしたい。


下地さんは、「まずは自分たち家族が食べるものを作る。多くとれたものは他の人にも食べてもらう」という考え方を軸に農業を営んでいる。そうしてたくさんとれた野菜などは、JAファーマーズマーケットやえやま ゆらてぃく市場で販売している。


そんな下地さんでも、ここを始めた当初はこの畑で稼いでやろうと意気込んでいたのだそう。だけれど、教えてもらった通りに肥料をやっても、土づくりがうまくいかなかったり、野菜が育たなかったりと葛藤の日々が続いた。そうして、画一的でなく、その土地や風土に合ううまいやり方があるのではと考えるようになったのだとか。


そんな時にふと思い出したのは自身のおばあちゃんの畑だった。おばあちゃんは、自宅のまわりで自分たちが食べるさまざまな種類の野菜を育てていた。子どもの頃から見ていて、そこまで手をかけていないけれど野菜は元気にできていて、「もしかしたら、シンプルな昔ながらのやり方がいいのでは」と思ったのだそう。


この場所で、今よりも大量に葉野菜を育てていたこともあった。時期になると、収穫のタイミングは他の農家さんとだいたい同じだから市場にたくさん出回る。そうすると安くせざるを得ない。さらには、あまってしまい廃棄になることも少なくない。果たしてそれがいいやり方なのか。



大きな機械を使ったり、たくさんの肥料を買って時間をかけて運んでくるような農業はお金がないと続かない。機械やデータばかりに頼らず、自分の手でやってみるからこそ気づくことがあったり、発見が多くなったり。ガソリンなど限りある資源ではなく、太陽や雨などの自然のエネルギーを活かせばいい。そして、季節や月のサイクルに合わせ、微生物の働きを大切にしたり、自然に寄り添っていくことでだんだんと手間も費用もかからなくなった。


そうして、『お金をかけないやり方』で農園を営むことがベストだというところにたどり着いたのだそう。


畑を見渡してみると、雑草もけっこう生えているのがわかる。むやみに雑草を抜かないことで赤土も流れにくくなるし、雨が続いてもそんなにぬかるむことがなく畑に入れるのだそう。たくさんの植物が一緒に植わっていることで、自然と豊かな土壌になっていく。


現在、畑の一角をレンタルスペースとして貸し出していて、いろいろな野菜やハーブが育てられている。情報交換の場にもなるし、なにより、多くの人に、食べるものを自分で育てるということを体験してほしい。そしてゆくゆくは、島内の食糧自給率も上がったらと考えている。


島の恵みを目一杯もらって、おいしいものを育てるのはもちろんのこと、鳥や虫が種を運んでくれたり、いろんな生物がやってきてくれる豊かな場所にすることを追求していきたい。


今後は収穫体験や、畑や野菜などにまつわるワークショップなどもやっていきたいと思っているのだそう。たくさんの人と、経験もアイデアも知恵も、良いものはなんでもシェアして循環させていく。


自然菜園 土楽

https://www.instagram.com/douraku_ishigakijima/?hl=ja

https://youtu.be/5tW9Y9AYxt8

リポート:Masumi