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知ることから変えていく。エシカルな商品を通して新たなライフスタイルを提案する雑貨店earth request

2022年8月にリニューアルオープンしたearth requestは、環境に配慮した商品が並ぶ雑貨店。店主の平尾知香子さんに、お店を持つに至った経緯や環境への想いについて伺いました。


earth requestに込められた夫婦の想い


ドライフラワーの装飾が並ぶおしゃれな店内には、エシカルかつ可愛い商品がいっぱい。「内地にある商品を、石垣島でも手に取って見ることができる場にしたかった」と話してくれたのは、店主の知香子さん。「お店に行ってワクワクする感覚が石垣でも実現できるといいなと思いました。もともと環境に興味がなくても、ふらりと雑貨屋さんに立ち寄ってくれた人にとって、環境に関心を持つ入口になれば嬉しい」。

このお店には、知香子さんと、ダイビングインストラクターである夫の一也さんの想いがたくさん詰まっている。

知香子さんは、もともと動物が大好き。動物を守るために環境を守りたいという想いが強かったそう。高校生の頃から海外のエシカルな商品に興味があったものの、日本にはそうしたプロダクトは少なかった。

一也さんは、15年以上に渡って石垣島でダイビングガイドをしている。その中で海が変わっていくのを目の当たりにしてきた。ダイビングのお客様にサンゴのことや日焼け止めのことなどを意識的に伝えてきたのだが、知香子さんももともとはダイビング客のひとりだった。陸と海がつながっていることをあらためて実感し、一也さんの「海に恩返しがしたい」という想いとともに、必要だと感じたものを形にしたのがearth requestなのだ。


長く使う、大事に使う、という感覚がいちばん大切


アメリカで生まれたシリコン製の容器「スタッシャー」を石垣で初めて販売したのがearth request。洗って繰り返し使えるジップ付バッグなのだが、使い捨てのものと違い丈夫で、冷凍やオーブンでも使える。パウンドケーキも、材料をスタッシャーに入れて混ぜ、オーブンでそのまま焼けるというからとても便利だ。本来はキッチン用品なのだが、石垣では海に持っていくバッグとして使う人も多いという。とはいえ使い捨てのジッパーバッグと比べればお値段もそれなり。だが、「安いと気軽に大量に使ってしまうもの。高いから大事に使おうって思える」というのが知香子さんの考えだ。

「洗剤も、安いとたくさん使ってしまうけど、高かったら3プッシュ使うところを1プッシュにしておこうって思える。長く使う、大事に使う、ということがエコという感覚においていちばん大事なんです。一方で、サランラップが使いやすいときは使っていいと思っています。ガチガチに厳しくして苦しくなってしまうより、まずは継続して日常に取り入れていくことが重要です」。

安いからまた買えばいいや、ではなく、高いけど丈夫でいいものだから、大事に使う。この感覚にシフトしていくことがエコ活動において重要なのだ。


エティークは、シャンプーバーの先駆けとなったブランド。固形なので、パッケージはすべて紙でできており、プラスチックゴミがゼロになる。旅行のときは、必要な分だけ切って持っていくこともできる優れもの。

ニュージーランド発のecostoreは、工場で排出する二酸化炭素を減らすなど、作る工程もすべてエシカルで、使い心地もよく、知香子さんが心から信頼するブランド。容器には生分解性プラスチックが使われている。

本当にやりたいのは目線を変える、習慣を変えること


リニューアルオープンに際して、知香子さんがどうしてもやりたかったというのが、洗剤の量り売りだ。「海外みたいに、みんなが容器を持ってきて買って帰る生活スタイルができたらいいな」。容器を持ってこなかったけど試してみたいという人のために、ボトルも無料で用意している。これらのボトルは、島内の飲食店から廃棄するものを提供してもらっている。「商品を売ることよりも、感覚とか目線を変えてもらえたら嬉しい」と、あくまでも押し付けるのではなく、便利だから、商品が好きだから、という自然な感覚で習慣を変えてもらうことを目標にしている。



手探りで始めたお店づくり


今ではすっかりファンも多いearth requestだが、始めは「お店ってどうやってやるの?」というところから手探りで始まったのだそう。もともと医療事務の仕事をしていた知香子さんにとって、お店を経営することは何もかも初めての経験。しかも、エシカル系の商品は卸売業者や問屋がないので、1件1件業者に掛け合って、お店に置かせてほしいという申請を出さなければならなかったという。「コロナ禍だったので、直接行って熱意を伝えることもできないし、まず商品を見つけるのが大変でした。SNSで探して気になったところに連絡をとったり、展示会に行って自分で商品を購入し、使ってみていいと思ったものを仕入れていきました」

そんな苦労を微塵も感じさせない居心地のよい店内だが、すべての商品が、知香子さん選りすぐりのこだわりの品だと思うと、ますます大切にしたくなる。





メイドイン石垣の洗剤づくり


知香子さんは現在、新しいプロジェクトのため奔走中だ。それは、月桃という植物を使ったメイドイン石垣の食器用洗剤をクラウドファンディングでつくること。月桃は、サトウキビ畑の外周に植えると、畑の土が雨によって海に流れ出ることを防ぐ効果がある。これをグリーンベルトと呼び、海に過剰な栄養が流れ込むことを防ぐことでサンゴ礁保全につながる重要なアクションなのだが、詳しく記述すると長いのでこちらのページをご参照いただきたい。



実際には、サトウキビ農家さんに月桃を植えてもらうことは、作物の種類が増えて手間が増えるだけで、単純に損失となってしまう。「ただ植えてほしい、と言っても広まらないので、月桃を使った商品を作って、月桃を作ることで利益が生まれるような仕組みにして、その先を示していくことが重要なんです」。

2022年12月か、年明け1月頃からクラウドファンディングを始める予定で、現在は石垣島にある化粧品メーカーのサンシャトゥーさんと一緒に製品開発を進めているという。

想いを形にして、しっかりと経済的なメリットを生み出せる仕組みを実装していく、画期的な取り組みだ。


まずは、知ることから


「エコとかわからない、敷居高そう、と思っていた人が商品を通して現状を知ってくれて、まず一歩踏み出してくれた瞬間を見ると、やっててよかったなと思います。サンゴの白化も、気候危機も、自分たちのやっていることが回りまわって戻ってきているだけ。自分たちの身も危ないし、どこかの誰かが苦労しているのは自分たちの生活の代償なんです」。


最近はゴミに興味があるという知香子さん。日本ではゴミの分別を減らす傾向が強いが、フィンランドでは厳しくしているという。「例えば、付箋の糊のところと糊がないところは分けて捨てないといけないそうです。そうすると、面倒だから付箋を使わない方法を考えますよね」。自分の買うもの、使うものが最後どう処分されるのか。そこに意識を向けると、おのずと購入の基準も変わってくるはずだ。

「全部つながっていて、循環している。まずはその事実を知ることが重要だと思っています」。


石垣市には、市をあげて石垣島をエコな島にしてほしい、と知香子さん。「こんなに生物が豊富で、サンゴ礁に囲まれた島が、海や山を大切にしない理由がないと思うんです。これが島の資源だから。私たちが守っていかないといけないから、みんなで考えることができるようになるといいなと思います。行政も市民も、みんなで一緒に考えることができるオープンな場ができたらいいな」。


取材後記

お話を伺う中で、知香子さんの言葉に乗せられた環境への想いがすごく心に響きました。持ち前の行動力で、その想いをどんどん形にしていく。それでいてアプローチは控えめで、ふらっと雑貨屋さんに入ってワクワクする気持ちから、自然と気付きを与えてくれます。クラウドファンディングのお話からは、メイドイン石垣のエコなプロダクトが、これからのエコな石垣島の象徴的な製品になっていく、素敵な未来を想像しました。海や山を近くに感じることのできる石垣島の環境の中で、島内外からのお客様に目線を少し変えてもらう。継続していった先のearth requestがますます楽しみです。


Asumi



earth request

石垣市新川2480-3 グランヴィリオ石垣横

営業時間:12時~19時 定休日:火曜日 駐車場有

https://earth-request.com/


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